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資産や事業を守るための「倒産隔離機能」活用を考える

この記事を読むのに必要な時間は約 4 分 7 秒です。

家族信託の「倒産隔離機能」活用を考える

新型コロナウイルス感染症により、経済への大打撃が心配されるなかで、今後、事業の縮小や生活を立て直すための自己破産を検討する機会が増えてくる可能性があるのではないかと考えております。

そこで、本記事では、以前の記事でも解説した家族信託の「倒産隔離機能」について、より深堀りして解説していきます。

まず、最初に申し上げておくと、倒産隔離機能をフル活用するには、委託者と受益者を分ける必要があることから、贈与税等が発生します。

活用するケースとしては、通常の贈与ではできないような、贈与後も管理処分権限はキープしておきたい場合や、事態が収束後は、返してもらいたい場合などに限られるものと考えます。

本記事のポイント

①そもそも倒産隔離機能とは

②信託が無効となる詐害信託って?

③倒産隔離のために信託設定の対象となるものには、どういうものがあるの?活用例は?

①そもそも倒産隔離機能とは

まず、信託の「倒産隔離機能」とは何か?から改めて触れておきます。

一言で言うと、信託の対象となった財産(信託財産)は、預けた人と預かった人のいずれの財産状況からも隔離されるという機能のことです。

受託者の財産状況からの隔離

信託を設定した場合、信託財産は、形式的に受託者の所有となります。

受託者には、個人でも、法人でも就任可能ですが、受託者となった人たちの固有の債務から信託財産を守るために、受託者の債権者は、信託設定前に信託財産に設定された債権や信託のためにした借入金等(信託財産責任負担債務)に関するものを除き、信託財産に属する財産に対しては、差し押さえ等をすることができません。(信託法23条)

これとよく混乱しがちなのが、信託財産に関する債務で、信託財産で弁済しきれない部分は、原則として、受託者の固有財産からも弁済しないといけないというものです。

いったん、まとめると、信託財産に関する債務は、信託財産からも受託者の固有財産からも弁済しないといけないけど、受託者の固有債務は、信託財産とは隔離されるというイメージです。

そういう意味では、債権者の理解も必要であると考えますが、受託者を一般社団法人にしておいて、身動きを取りやすくしておくのも一案かもしれません。

委託者の財産状況からの隔離

上記でも説明した通り、信託を設定すると、法形式上の所有権は、受託者のものとなるため、委託者の財産や債務からは、基本的に切り離されることとなります。

その一方で、信託設定前から、信託財産となる資産に担保設定をしていた場合などには、信託設定後も信託財産に紐づく部分の債務は、信託財産から弁済が必要であるため、注意が必要です。

また、委託者兼受益者となる場合(自益信託)とする場合には、受益者が破産等した場合には、受益権は、破産財団に組み込まれるため、委託者兼受益者の破産等からは隔離することができませんので、ご注意ください。

②信託が無効となる詐害信託って?

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信託設定をしても信託財産を守りきれない場合もあります。それが、次に紹介する詐害信託として認定される場合です。

詐害信託とは、委託者が、債務の弁済を免れることを目的に、設定したことが明らかな信託です。つまり、信託の悪用を防止するための取り扱いです。(信託法11条)

詐害信託と認められた場合、債権者が、裁判所に申し立てて、信託設定の無効を主張することができます。

ただし、取り消しを主張できるのは、設定時に、受益者が、債権者に損害を与えることを知っていた場合に、限られており、受益者が善意である場合には、救済されることになっています。

このあたりをどのように説明するのかを含め、信託設定にあたっては、慎重に検討する必要があるものと考えますし、事前に、債権者である金融機関等に説明しておくと無難です。

③倒産隔離のために信託設定の対象となるものには、どういうものがあるの?活用例は?

以上をふまえて、倒産隔離のための信託設定を検討します。

1:自社株式の信託

1つ目は、自社株式の信託です。

こちらは、幸か不幸か、新型コロナウイルス感染症の影響により、自社株式の評価額が、低下することを想定した対策であり、事業承継の準備も同時に行えるものと考えております。

スキーム例

委託者:現経営者

受託者:委託者自身又は一般社団法人など

受益者:後継者

指図権者:現経営者(自社株式の議決権について、指図可能)

検討したこと

受託者については、自己信託(委託者兼受託者)とすることが、一般的かと考えますが、受託者の認知症リスクなどを考慮する場合には、一般社団法人などにしておくことも一案です。

留意点

現行法令上、信託財産である自社株式については、「事業承継税制」が活用できないため、多額の贈与税が発生する可能性がありますので、ご注意ください。

2:事業の信託

2つ目は、事業単位の信託です。

取引先などに守りたい事業に関する権利を預けるための信託設定です。事態収束後に、信託を終了して、対象会社に、事業を返還することを前提としております。

スキーム例

委託者:対象会社

受託者:対象会社又は一般社団法人など

受益者:取引先など

検討したこと

受託者については、対象会社自身、一般社団法人にするなどのいずれのケースも想定できます。株式会社が受託者を務める場合には、営利目的であるとして、「商事信託」の認定がされ、法規制が厳しくなる可能性があるため、一般社団法人としておくことが無難であると考えました。

留意点

受益者側で、受益権となる事業に関する資産から負債を差し引いた純額について、受贈益に対する法人税課税がされるものと考えます。

なお、事業の信託設定にあたっては、債務を信託することができないため、委託者から受託者への債務引受という形で、債務を移転することになります。この際、債権者の合意を必要とするものの、元の債務者(対象会社)が債務の負担を免責される「免責的債務引受」と、債権者の合意を不要とするものの、元の債務者(対象会社)が債務の負担を免責されない「重畳的債務引受」があります。

したがって、実行にあたっては、債権者である金融機関等とよくご相談頂ければ幸いです。

おわりに

今回は、新型コロナウイルス感染症への資産防衛対策として、信託の「倒産隔離機能」について、深堀りしましたが、より特殊な活用例やレアケースである場合の注意点は、話を複雑にする可能性があるため、説明を割愛した部分もあります。

また、活用例の中では触れていませんが、自宅を信託財産として配偶者を受益者とする信託も想定されましたが、不動産の移転コストを除いては、通常の贈与と変わらないため、わざわざ信託を設定する必要がないと判断し、活用例からは割愛しております。

最後に改めて申し上げますが、対策実行にあたっては、取引金融機関だけでなく、弁護士の先生や司法書士の先生などによくご相談のうえ、検討頂ければ幸いです。

ではまた!

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税理士 ヒロ

経営者、数字が苦手な方に寄り添い、税務の立場から支援したいという思いから税理士を目指し、20歳の時に税理士試験に合格しました。 その後、資産承継、事業承継に特化した税理士事務所に入社し、日々顧客の満足とは何か、自分の成長の形とは何かを追い求め、7年目に突入しました。 こちらのブログでは、私の日々の学びやアウトプットを記事として投稿しておりますが、会社経営をされる方、新規事業を考えられる方、事業戦略を考えている方の少しでも参考になれば嬉しい限りです。 私のアウトプットを通して、足りないと感じていた1ピースや、改めて見つめなおすべき1ピースを見つけ、考え直す場として活用頂ければと考えております。

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