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上場株式オーナーのための家族信託【大株主の雲隠れ信託】

この記事を読むのに必要な時間は約 3 分 58 秒です。

上場株式オーナーの家族信託

事業承継と家族信託

私は、事業承継に家族信託が活用される社会は、今後より広がっていくと考えておりますし、期待しております。

これは、

・家族信託の自由度

・家族信託ならでは、3つの機能

・現在不安定な税制が整備されていく可能性

などを理由としております。

そのあたりは、以下の記事でも触れておりますので、ぜひ確認いただければと思います。

上場オーナーが抱える「大株主の5%ルール」とは?

今回は、「上場会社オーナーの雲隠れ」という、非常に尖ったテーマですが、家族信託では、上場会社オーナーでも承継の状況をぼやかすことができますよという事例紹介となります。

スタートアップの起業家は、株式売却もしくは上場により、創業者利益を得ることを最終的な目標にしている方も多いと思います。

その中でも、上場会社のオーナーになった後の承継について、フォーカスした対策となります。

まず、雲隠れってどういうこと?

という部分ですが、この話の前提に、

金融商品取引法 により、上場株式を5%以上保有している株主については、有価証券報告書等により開示が求められています。いわゆる「大株主の5%ルール」です。

さらに、大株主については、保有割合が1%移動した場合等(住所変更や株式を担保に入れた場合を含む)に、随時報告が必要となります。

大株主(創業家)については、公開情報として、親族のなかで誰が株式を引き継いだのかが知れ渡ってしまうということですね。(個人の場合には、市町村までの住所を乗せる形です。)

事業承継を考える上場株式オーナーに想定されるニーズ

・株価対策、承継の状況をこうかいじょうほうにしたくない

・大量保有報告書の変更届出がめんどくさい

・同族支配の印象を少しでも薄めたい

・配当受取と議決権を切り分けたい(上場株式の種類株式化はハードルが高いため)

・株式を移転することによる譲渡所得税を負担せずに株式の所有関係を見えない化したい

カルビー幹の会のスキームを考えてみる

そこで、紹介したいのがカルビー社の事例です。

家族信託実務を扱う専門家の中では、有名な話であるのですが、カルビー社については、「カルビー幹の会」という一般社団法人を活用して、事業承継の状況をブラインドしているというものです。

概要図を以下に整理してみました。

イメージの助けになれば幸いです。

カルビー社のスキームのポイント

①有価証券報告書に登場する大株主は、一般社団法人幹の会

②一般社団法人の登記事項の活用

③譲渡所得税を負担せず、所有関係の見えない化ができる

④配当の受取等についても分散可能

① 有価証券報告書に登場する大株主は、一般社団法人幹の会

以下は、カルビー社の2019年3月期の有価証券報告書での大株主の記載です。

このように、信託の受託者(株式を預かっている)である一般社団を箱にして、株式を集めることで、親族のなかで、誰が株主なのかをぼやかすことができるということです。

なそ、委託者と受益者を同一にすれば、信託設定時の課税はありません。

② 一般社団法人の登記事項の活用

次に一般社団法人の登記事項の活用です。

登記簿謄本の引用は、割愛しますが、私が幹の会の商業登記簿を確認したところ、幹の会の登記情報の中には、親族と考えられる松尾家の名前はありませんでした。

一般社団法人の登記事項には、理事(株式会社でいうところの取締役)を登記することとなっているのですが、この理事には、税理士事務所の方の名前があったので、おそらく顧問税理士のメンバーではないかと推察できます。

一般社団法人には、株式会社での株主にあたる社員という役割があるのですが、これは登記事項ではないんですね。

なお、一般社団法人の社員には、会社も就任可能です。

株式会社であっても、誰が株主でとか誰が出資者だとかいうのは、登記しませんよね。

また、幹の会には、理事会が設置されていません。

この場合には、幹の会の意思決定機関は、社員総会(株式会社で言うところの、株主総会)となります。

私の見立てでは、この社員に、親族の中での資産管理会社(家族会社)を就任させて、議決権行使の意思決定権を集約させているのではないかと推察しています。

③譲渡所得税を負担せず、所有関係の見えない化ができる

通常株式を資産管理会社に移転し、親族株主状況を見えない化したければ、移転のタイミングで株式譲渡益の20%相当の譲渡所得税が課税されます。

平成21年から平成25年の期間は、10%相当の税率が適用されておりましたので、幹の会が設立された平成21年に対策を行っていれば、、、という話もありますが、いずれにしても上場株式となると時価総額も大きいため税負担は馬鹿にできません。

一方で、信託を用いれば、受託者は箱の機能を持ちますが、株式を買ったり、貰った関係にないので、委託者と受益者を同一にする限りにおいては、譲渡所得税も贈与税も発生しません。

④配当の受取等についても分散可能

カルビー社の株式承継の背景を考えるうえで、その背景について、公開されている情報から推察できることがあります。

一般社団法人幹の会が設立された時期は、創業家から、RIZAPで社外取締役をされていたことでもおなじみの松本さんに代表者が変更になったタイミングと近しい時期です。

出資と経営が親族から完全に切り離されたタイミングを機に議決権を親族の中から集約し始めたのではないかと考えられます。

なお、議決権行使の権利は、税務上の財産評価額は、ゼロ円となります。

そのうえで、配当の受取等については、親族の中で、自由に分散承継している可能性もあるのでがないかと考えております。

ただし配当受益権の受取については、高額の贈与税課税が想定されるため可能性は低いものと考えますが、、、株価が大きく下がったタイミングで対策を行うのであれば効果はあるものと考えます。

この事例からの学び

この事例から何を学べるのか?

今回は、上場会社カルビーの事例紹介となりましたが、上場株主オーナーのブラインド需要は今後より高まるものと考えております。

見える化に求められる世の中だからこそ、あえて見えない化をさせて、自由に承継して、世間に個人名を公開したくない(非公開化するには、相当の資金力が必要などハードルが高い場合)という理由が考えられるからです。

そもそも上場オーナーが、財団や社団を活用して、社会貢献に役立てたいという事例はこれまでもたくさんありました。

家族信託が使いやすくなったり、一般社団法人や一般財団法人が設立しやすくなったのは、ここ10年から15年の話です。このような法改正のキャッチアップが早く、柔軟に承継に紐づけていくカルビー社の姿勢は非常に参考になるものと思います。

法改正があった直後に、これで何ができるようになるのか?と考える姿勢は常に持ち続けたいものです!

ではまた!

 

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税理士 ヒロ

経営者、数字が苦手な方に寄り添い、税務の立場から支援したいという思いから税理士を目指し、20歳の時に税理士試験に合格しました。 その後、資産承継、事業承継に特化した税理士事務所に入社し、日々顧客の満足とは何か、自分の成長の形とは何かを追い求め、7年目に突入しました。 こちらのブログでは、私の日々の学びやアウトプットを記事として投稿しておりますが、会社経営をされる方、新規事業を考えられる方、事業戦略を考えている方の少しでも参考になれば嬉しい限りです。 私のアウトプットを通して、足りないと感じていた1ピースや、改めて見つめなおすべき1ピースを見つけ、考え直す場として活用頂ければと考えております。

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