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信託で財産を承継しても遺留分減殺請求ってされるの?

この記事を読むのに必要な時間は約 4 分 0 秒です。

家族信託のリレー機能を解説した記事にて、倫理上の問題があるものの、特別受益認定外しによる遺留分減殺請求対策として、家族信託が利用されるケースがあることに触れました。

[getpost id=”381″ title=”信託のリレー機能とは” target=”_blank”]

今回は、この家族信託にて、特別受益外しが否定された裁判例を紹介します。

平成30年(2018年)9月12日東京地裁判決です。

リレー機能と特別受益をざっくり振り返ると

①委託者が、遺言により、お子様(配偶者あり)を第一次受益者として信託を設定します。

②お子様に万が一があった場合の次の受益者として、委託者の甥などを指定します。

この場合、委託者の相続発生時には、お子様の配偶者が遺留分減殺請求をすることはできません。

これは、お子様の配偶者は、養子縁組でもしていない限り、委託者の相続人ではないためです。

また、お子様の相続発生時にも、信託受益権の取り扱いについて、遺留分減殺請求をすることはできません

この辺りは、信託法が、税務上の権利引き継ぎという考え方とは異なり、一度受益権は消滅したうえで、改めて委託者から第二次受益者が受益権を取得するという考え方に立っているためという説明をさせて頂いたかと思います。

判決をざっくり説明すると、

この判決を一言で説明すると「遺留分を侵害するためだけの設定と考えられるような信託契約が無効と認定された」という事例です。

契約について、どう考えるかという認定ではなく、契約自体が取り消されたわけなんですね。

登場人物

甲・・・被相続人兼委託者兼第一次受益者(第一次の受益割合100%)

A・・・甲の長男兼第二次受益者(受益割合6分の1)

B・・・甲の二女 兼第二次受益者 (受益割合6分の1)

C・・・甲の二男 兼第二次受益者 (受益割合6分の4)

Cの子ら・・・第三次受益者(第三次の受益割合100%)

時系列による整理

1.甲は、信託契約の4日前に、Bに全財産の3分の1、Cに全財産の3分の2を渡す死因贈与契約書を作成(甲とB,Cの間で合意した遺言)

2.その後甲は、所有する全ての不動産(自宅、山林、賃貸物件)と金銭300万円を新多雨財産とする信託を設定した。 なお、これは、死亡する2週間前の出来事でした。受益割合は、上記登場人物内のカッコ書きの通りです。

なお、受託者は、Cが就任しています。

3.不動産の内容は、以下の通りです。

ア.自宅 (固定資産税評価額約3億5,000万円)

イ.賃料収入として年間1,000万円がある賃貸物件(固定資産税評価額約1億2,000万円)

ウ.相続税納税のために、甲の死後売却している不動産(固定資産税評価額約1億2,000万円)

エ.山林ほか(固定資産税評価額約2万円)

4.AはCに対して、遺留分の減殺請求を行い、信託契約と死因贈与契約の無効を主張した。

5.東京地裁は、信託契約の対象となった不動産のうち、アの自宅、エの山林ほかについて、収益を生むものでもなく、「受益させる」意図も感じられないから、遺留分を侵害するためだけの信託設定であり、公序良俗に反するということで、契約の無効を認定した

判決のポイントと今後への学びは3つ

①賃貸物件や、売却している物件については、Aにも受益者として分配を受ける権利があるため、契約の全てを否認しているわけではない。

②亡くなる直前の契約であっても、意思能力が不足しているという認定はおこなっていない

③今回の遺留分減殺請求は、委託者の相続人が委託者の遺産に対して、行ったものであり、第二次受益者の相続人が遺留分減殺請求をしたものではない。

ポイント①について

今回の認定については、契約すべてを否定しているわけではなく、あくまでも「遺留分対策」のためだけに、組成されたと考えられる部分が無効の認定を受けています。

信託を活用させるのであれば、受益者に、「利益を受けさせる意思」が客観的にどの程度あるのかも重要な要素ということですね。

ポイント②について

死因贈与契約も信託契約も、いずれも亡くなる前1カ月以内に契約されていることになりますが、直前の承継対策であっても、ただちに全て否認されているわけではないということですね。

ただし、亡くなる直前に契約を組成していたことで、心証を悪くした可能性は否めません。。。

ポイント③について

冒頭で触れたような、リレー機能を活用した遺留分対策に関する倫理上の問題がありましたよね?

そちらについては、今回の事例には、あてはまらないため、法令解釈上もまだ不安定ということですね。

ただし、「遺留分対策」だけを目的とした信託組成は、公序良俗に反するという理由で認定がされている以上、信託を組成するにしても経済的合理性であったり、遺留分侵害者に対して利益分配の要素を考えておくのは、大事なのかなと思います。

なので、承継対策として、信託を組成される場合には、今後の動向の観察も含めてご注意頂ければ幸いです。

この認定により、財産がどのような扱いになったのかを考えてみる

この判決では、信託契約の一部が無効と認定された遺留分の減殺請求が認められたのでしたよね?

これにより、委託者の遺産がどのような扱いを受けるのかを考えてみました。

まず、信託契約のうち、自宅や山林部分の契約が無効と認定されています。

この場合、自宅や山林部分が甲の現物の遺産として、遺産分割の対象になるのですが、今回の場合、BとCに対する死因贈与契約が存在していました。

死因贈与契約については、無効という認定はされていませんから、全財産から計算したAの遺留分から、Aが信託受益んとして引き継いだ賃貸物件や売却物件の6分の1部分を差し引いた残りがあれば、これが遺留分侵害部分です。

こちらについて、死因贈与契約によって、財産を引き継ぐことになる、BやCに対して、遺留分の減殺請求をすべきなのでしょうが、Aは、割合が多いCに対して、減殺請求を行っています。

減殺請求対象となる財産の順番としては、遺言、死因贈与、生前贈与の順番とされています。( 東京高判平成12年3月8日 )

今回の場合は、死因贈与と信託契約を同列のものと扱うという見解にたって、死因贈与契約の対象となっている自宅や山林ほかの財産について、減殺請求が実行されたのではないかと考えております。

生命保険契約が、民法上の財産ではないとして、原則として、特別受益に該当せず、遺留分減殺請求の対象にならない反面、信託契約は、受益者(受取人)の指定もあり、民法上の相続財産にも該当しないにもかかわらず、遺留分減殺請求の対象になるのは、不思議です。

私の見解としては、生命保険金や死亡退職金は、保険会社や勤務先から支給されるのに対して、信託受益権は、亡くなった方から引き継ぐ性格が強いため、遺留分減殺請求の対象になっているのではないかと整理しています。

法令上は、死因贈与と同列に扱われているという解釈も理解できないわけではありませんが、なんだかな~という感じです。

[getpost id=”352″ title=”特別受益とは?” target=”_blank”]

まだまだ勉強することばかりのようです。

今後の動きに注目しましょう

ではまた!

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税理士 ヒロ

経営者、数字が苦手な方に寄り添い、税務の立場から支援したいという思いから税理士を目指し、20歳の時に税理士試験に合格しました。 その後、資産承継、事業承継に特化した税理士事務所に入社し、日々顧客の満足とは何か、自分の成長の形とは何かを追い求め、7年目に突入しました。 こちらのブログでは、私の日々の学びやアウトプットを記事として投稿しておりますが、会社経営をされる方、新規事業を考えられる方、事業戦略を考えている方の少しでも参考になれば嬉しい限りです。 私のアウトプットを通して、足りないと感じていた1ピースや、改めて見つめなおすべき1ピースを見つけ、考え直す場として活用頂ければと考えております。

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