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3億円の贈与税納税となった中央出版事件(乳児住所事件)って何?何が問題だったの?

この記事を読むのに必要な時間は約 5 分 10 秒です。

前回取り上げた武富士事件と合わせて住所に対する考え方から贈与税を支払う義務があるのかどうかを争った裁判例として、「中央出版事件」があります。 今回は、中央出版事件の概要とポイント、今後の学びについて整理していきたいと思います。 税制改正のきっかけにもなった事例となりますので、学びにはなるものと思います。 [getpost id=”264″ title=”武富士事件とは?” target=”_blank”]

中央出版事件をざっくり説明すると

中央出版事件を一言で言うと、

中央出版事件・・・「海外に生まれた日本国籍がなく、日本居住もしていない孫に、財産を渡したけど、孫の日本居住が認定されて、贈与税を3億円払うことになった話

です。 なお、3億円の内訳は、本税2億7千万円、利息と罰金4千万円です。 それでは、概要の整理に入っていきましょう!

まず、登場人物

祖父・・・財産を渡した人、父の親であり、孫の祖父という関係 父・・・孫の父であり、祖父の子という関係 母・・・孫の母であり、父の妻 孫・・・財産をもらったとして、贈与税が認定された人

時系列による整理

1.父母は、2003年4月に、日本にて自宅を購入し、住民票の住所を2009年ごろまで、購入した自宅にしていた。 2.孫と父母は、2003年末に、米国に渡米し、孫を出産した。 3.2004年1月にいったん帰国した後、2004年4月に再び、親子で渡米した。 この間も、父だけは、日本と海外を行き来している状態。 4.2004年8月に、祖父所有の、米国際500万ドルを信託財産として、母が受託者、財産受取人を受益者とする信託契約を設定。

5. 父母と孫は、2004年9月に帰国後は、孫の弟出産の際を除いて、継続して日本居住

6.母は、信託財産を原資として、2004年9月に、父を被保険者とする声明保険に加入し、440万米ドルを支払った。日本帰国後の手続き。なお、残りの60万ドルは、引き続き米国債にて、運用されている。 6.母は、2005年5月に、夫婦で出国し、米国にて孫の弟を出産後、8月に帰国した。

中央出版事件で、贈与税課税となった3つのポイント

①この事例は、当時の税制を逆手に取った事例である。

②「そもそも信託の実態があるのか」と「孫は利益を受けているのかどうか」で争った。

③名古屋高裁独自の論点として、孫は、米国籍、米国居住であったが、親権者である父母が、日本住所であることから、孫も日本住所であるとみなされて、贈与税が課税された

ポイント①

まず、①については、 当時の税制は、財産受取人が日本居住であれば、全世界の財産に対して、課税がされ、受取人が日本居住で無い場合には、日本国籍があるかどうかで判定されるものでした。仮に、受取人に、日本国籍がない場合には、日本の財産のみに対して、課税されて、日本国籍がある 場合には、渡した人か受取人が、5年以内に日本居住していれば、全世界財産課税がされるというルールでした。 これは、武富士事件直後の2000年4月から改正されたルールなんですね。 なお、この事例をきっかけとして、2013年4月より、財産を貰う人の国籍は、特に関係なくなっています。

ポイント②

続いて、②については、争った点が まず、「信託の実態があるかどうか」については、裁判所は、特段異論なく認めています。 次に「孫は、利益を受けているのか」については、名古屋地方裁判所と名古屋高等裁判所で意見が分かれています。 信託契約の内容として、440万ドルは、父の死亡を保険事故とする生命保険(満期68年後、死亡保険金付き)の保険料として、支払っており、また、保険金が支払われても、一括で渡すのか、分割で渡していくのかなど、孫に分配していく配分については、母の裁量次第だったわけなんですね。 また、米国際60万ドルについては、生命保険の管理費用として、毎年1万ドル相当が発生するため、そちらに対する原資として、利用するという見込みだったわけなんです。

名古屋地裁では、孫は、信託契約設定時には、利益を受けていないとして、贈与税を課税しないという認定をしたんですね。そうなんです。名古屋地裁は、国籍や住所は、判断要素にはなっていないんです。意外です。。。

このあたりについて、名古屋高裁での判断によると、 「孫が利益を受け取っているかどうか」については、ここが名古屋地裁と異なる見解となるのですが、名古屋高裁では、信託設定をした時点に、利益を受けていたと考えるので、分配を受けているのか、ただちに、受けられるのかは、特に関係ないということなんですね。 しばらく解約不能の金融資産や、買い手がいない不動産をもらっても、税金がかけられることを考えると、合理的な判断かと思います。 また、名古屋高裁では、米国際に引き続き運用されていた60万ドルについても、孫が受益しないという取り決めは、ないのだから、そこも利益に含めると認定をしています。 ということで、孫は、信託により、利益を受けていたという認定となったわけですね。 そして、名古屋高裁独自の論点である、孫の住所の判定であるポイント③へと進んでいくわけですね~

ポイント③

最後にポイントの③についてですが、ここで一度どうなれば、課税なのかをおさらいしておきましょう。 今回の場合は、財産の中身の所在判定と孫の住所の取り扱いが大事になってくるのですが、 財産の所在については、信託設定の時点では、すべて米国債であるため、この場合は、発行をした米国に財産の所在があるものと考えるんですね。つまりは、日本からみれば、海外財産となります。

ということは、孫が全世界財産課税の対象でない場合には、課税ができないということになりますね。

孫が日本居住または、日本国籍があるんだ!というのを多少強引に認定しに行ったのが、名古屋高裁ということになるわけですね。 名古屋高裁の理屈としては、孫は当時生後8カ月だったので、両親の生活状況も考えながら、住所がどこかを判断していくということなんです。 今回の事例としては、信託契約による贈与を行った時点では、孫は、米国籍、米国居住となるのですが、その時点での、父母の住所はどこだったのかまで見ますよーと言っているわけなんですね。

父母としては、出産によ孫の米国籍習得のために渡米しているだけだし、日本でも自宅を購入して、住んでいるのだから、父母は日本居住!したがって、孫も日本居住!と認定したというお話です。

今後への学び

この事例から、私が読み取ったことは、以下の通りです。 興味がある方のみご覧ください。 ①孫、孫の弟の出産のために、渡米しているところを見ると、意図的な米国籍認定と今後も孫の弟に対して、同様のスキーム組成を検討していたのではないか? ②贈与行為なのに、比較的早めに税務署に把握されている。(申告期限は、2005年3月なのに対して、決定処分を受けているのは、2007年1月)何があったのか?祖父の死亡は、2014年のため、相続税の税務調査にひもづいたものではない。 ※祖父からの相続の際にも、100億円の申告漏れによる、60億円の追徴課税がされた事例があるので、またそのあたりも解説しようと思います。 ③父母の米国滞在日数は、信託設定前は、米国に183日滞在しており、短期間的に見れば、日本よりも滞在の比率は大きいが、裁判所は、信託設定後ずっと日本居住だったというところまで見てきている。 ④信託を経由したのは、手続き面のことを考えてだろうか ⑤節税のために、海外で出産するというスキームはなかなか強引←経済的合理性なしと言えば、なしだけど、米国籍になるのは、仕方ないとして、信託設定直後に、日本に連れ帰っているのが、悪意があるとして、心証を悪くしたのではないか父母が、しばらく海外居住をしていれば、どういう認定がされていたのだろうか?日本財産へのみなしでもっていくとすれば、贈与税課税はされなかったのではないか(将来保険の解約返戻金相当額に、相続税課税される可能性は残るが」 中央出版事件、5億円の贈与でも、2004年当時から、しっかりと把握して、海外にも目を光らせていたわけですね~ 改めて確認してみると、勉強になることも多くありました! 今後の実務に役立てたいなと思います! ではまた!
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税理士 ヒロ

経営者、数字が苦手な方に寄り添い、税務の立場から支援したいという思いから税理士を目指し、20歳の時に税理士試験に合格しました。 その後、資産承継、事業承継に特化した税理士事務所に入社し、日々顧客の満足とは何か、自分の成長の形とは何かを追い求め、7年目に突入しました。 こちらのブログでは、私の日々の学びやアウトプットを記事として投稿しておりますが、会社経営をされる方、新規事業を考えられる方、事業戦略を考えている方の少しでも参考になれば嬉しい限りです。 私のアウトプットを通して、足りないと感じていた1ピースや、改めて見つめなおすべき1ピースを見つけ、考え直す場として活用頂ければと考えております。

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